
本田宗一郎から学ぶ――お金より先に増やすべき「自分の資産」とは
「もっとお金があれば、人生は変わるのに」
そう考えたことはないでしょうか。
貯金がもっとあれば。
給料がもっと高ければ。
投資する元手がもっとあれば。
もちろん、お金は大切です。
生活を守るためにも、将来に備えるためにも、ある程度のお金は必要です。
しかし、人生を長い目で見たとき、お金そのものより先に増やしておいたほうがいいものがあります。
それは、
「自分自身の価値」です。
知識。
技術。
経験。
信用。
人とのつながり。
失敗から学ぶ力。
こうしたものは、銀行口座には数字として表示されません。
けれども、場合によっては現金以上に大きな財産になります。
そのことを、人生そのもので示した人物の一人が、Hondaの創業者・本田宗一郎です。
15歳の少年が持っていたもの
本田宗一郎は1906年、静岡県に生まれました。
1922年、15歳で東京へ出て、自動車修理工場「アート商会」に入ります。Hondaが公表している履歴にも、1922年4月10日にアート商会へ入社したことが記録されています。
15歳です。
もちろん、大きな財産を持っていたわけではありません。
会社を持っていたわけでもありません。
高い給料をもらっていたわけでもありません。
しかし、彼には一つ、大きなものがありました。
そして、そこから始まります。
機械を見る。
触る。
直す。
失敗する。
また直す。
人に教わる。
自分で考える。
こうして少しずつ、自分の中に技術を蓄積していきました。
銀行預金の残高はそれほど増えていなかったと思われます。
しかし、本田宗一郎という人間の中には、
目には見えない資産が毎日少しずつ積み上がっていた
のです。
私たちは「資産」という言葉を狭く考えすぎている
「あなたの資産はいくらですか?」
そう聞かれたら、多くの人は、
預金300万円。
株式500万円。
投資信託200万円。
自宅の評価額3000万円。
そんなふうに答えるでしょう。
もちろん、それも立派な資産です。
しかし人生には、もう一つの資産があります。
それが、
自分自身が持っている能力です。
たとえば、料理が得意な人。
人に教えることが得意な人。
文章を書くことができる人。
営業が得意な人。
パソコンに詳しい人。
人の話を聞くことが上手な人。
長年同じ仕事を続けてきた人。
資格を持っている人。
これらもすべて、
です。
ところが、この資産は金融資産と違って、証券会社の画面には表示されませんし、銀行口座の残高には反映されません。
だから私たちは、その価値を忘れてしまいがちです。
戦争が終わり、また一から始めた
本田宗一郎の人生は、最初から順風満帆だったわけではありません。
一度は部品メーカーの経営に成功しましたが、その事業を手放し、戦後に再出発します。
1946年、本田技術研究所を設立。
そして1948年9月24日、本田技研工業株式会社が設立されました。Hondaの公式社史によれば、終戦後の日本は物資不足、インフレ、食糧難の中にあり、そのような環境からHondaはスタートしています。
考えてみれば、非常に厳しい時代です。
今のように豊かな市場があるわけではありません。
資金が潤沢にあるわけでもありません。
それでも本田宗一郎には、戦争で失われなかったものがありました。
工場を失うことはあります。
お金を失うこともあります。
会社を失うことさえあります。
しかし、自分の中に積み上げた経験までは、簡単には奪われません。
これは非常に重要なお金の教訓だと思います。
「お金を持つ人」ではなく、「価値を生み出せる人」になる
戦後、人々の主な移動手段は自転車でした。
本田宗一郎は、自転車に補助エンジンを取り付けるという発想を形にしていきます。
Hondaは、1947年に最初のオリジナル製品となるA型エンジンを発売しました。公式資料では、遠くまで買い出しに行く妻を楽にしてやりたいという思いも、自転車用補助エンジンの発想につながったと紹介されています。
ここに、非常に大切なことがあります。
本田宗一郎は、
「どうすれば自分がお金持ちになれるか」
だけを考えていたわけではありません。
その前に、
を考えていました。
そして、人の困りごとを解決する製品を作った。
結果として、そこにお金がついてきたのです。
これは商売の原点でもあります。
お金とは、突然どこかから湧き出してくるものではありません。
誰かに価値を提供し、
「これは便利だ」
「これが欲しい」
「これならお金を払いたい」
と思ってもらうことで生まれます。
つまり、
お金を追いかける前に、価値を生み出せる人になる。
そのほうが、長い人生では強いのです。
「失敗」は、本当に損失なのか
投資をしていると、
「損をしたくない」
と思います。
仕事でも、
「失敗したくない」
と思います。
これは当然です。
しかし、本田宗一郎の考え方には、失敗を少し違う角度から見るヒントがあります。
Hondaは現在も、創業者の言葉として、
という考え方を紹介しています。
失敗した瞬間だけを見ると、確かにマイナスです。
お金を失ったかもしれない。
時間を失ったかもしれない。
恥ずかしい思いをしたかもしれない。
しかし、
「なぜ失敗したのか」
を考え、
次に同じ失敗をしないようにすれば、
その失敗は経験という資産になります。
つまり、
失敗には「消費される失敗」と「資産になる失敗」という2通りの失敗がある
のではないでしょうか。
何も考えず同じ失敗を繰り返せば、ただの損失です。
しかし、失敗から学び、自分を変えることができれば、その経験は一生自分の中に残ります。
100万円を増やすことだけが資産形成ではない
資産形成というと、
NISA。
株式。
投資信託。
配当金。
不動産。
こうしたものが思い浮かびます。
もちろん、それらは大切です。
しかし、仮に100万円を年5%で運用したとしても、1年間の運用益は単純計算で5万円です。
一方で、自分の技能を高めた結果、
月1万円だけ収入が増えたとします。
それだけでも年間12万円です。
しかも、その能力が10年、20年と使えるなら、その価値はさらに大きくなります。
これは、
「投資をするな」
という話ではありません。
むしろ逆です。
50歳からでも「自分の資産」は増やせる
ここで、
「そうはいっても、本田宗一郎のような特別な人だからできたんでしょう」
と思う人もいるでしょう。
その通りです。
誰もがHondaのような世界企業を作れるわけではありません。
そして、作る必要もありません。
大切なのは規模ではありません。
昨日より一つ、自分にできることを増やす。
それで十分なのです。
50歳になってからでも、
動画編集を覚える。
ブログを書く。
料理を覚える。
資格を取る。
パソコンを勉強する。
英語を勉強する。
人に教える。
新しい仕事を経験する。
投資について学ぶ。
こうしたものは全部、自分の中に残ります。
1日では大きな変化になりません。
しかし、
1年。
5年。
10年。
と続ければ、大きな差になります。
金融資産とよく似ています。
からです。
知識が増えれば、次の知識を理解しやすくなる。
経験が増えれば、判断が速くなる。
信用が増えれば、新しい仕事につながる。
人とのつながりが増えれば、新しい機会が生まれる。
こうして一つの資産が、次の資産を生み始めます。
お金だけを増やそうとすると苦しくなる
「1億円欲しい」
「配当金だけで暮らしたい」
「早く資産5000万円にしたい」
これらの目標を持つこと自体は悪いことではありません。
しかし、お金だけを人生の中心に置いてしまうと、苦しくなることがあります。
自分より資産が多い人が気になる。
株価が下がると不安になる。
他人の収入が気になる。
SNSに出てくる成功者と比べて落ち込む。
しかし、自分自身の成長を資産だと考えると、少し見方が変わります。
昨日知らなかったことを知った。
昨日できなかったことができるようになった。
人から「ありがとう」と言われた。
誰かの役に立てた。
それも、立派な資産形成なのです。
本田宗一郎が残したもの
本田宗一郎が残した最大の財産は、本人が持っていた預金額ではありません。
Hondaという会社。
技術。
製品。
人材。
そして、
という気持ちを持つことです。
Hondaの公式社史にも、創業当初から「技術で人の役に立ちたい」という思いを持ち、挑戦を繰り返してきたことが記されています。
お金は使えば減ります。
しかし、
人に残した知識。
育てた人。
作った仕組み。
誰かに与えた影響。
これらは、自分がいなくなったあとにも残ることがあります。
もしかすると、
本当の意味での「資産」とは、そこまで含めて考えるものなのかもしれません。
今日から始められる資産形成
この記事を読んで、
「では何をすればいいのか」
と思ったら、難しく考える必要はありません。
今日、一つだけでいいと思います。
本を10ページ読む。
新しいことを30分勉強する。
仕事で分からなかったことを調べる。
人に教えられるくらいまで一つのことを理解する。
今まで避けていたことに挑戦する。
それだけです。
1000万円を貯めるには時間がかかります。
でも、
そして、それを毎日続けていけばいい。
最後に
私たちは、ついこう考えてしまいます。
「お金があれば、もっといろいろなことができるのに」
でも、本田宗一郎の人生を見ていると、順番は逆だったのではないかと思えてきます。
お金があったから挑戦できたのではなく、
挑戦したから、できることが増えた。
できることが増えたから、
人の役に立てるようになった。
人の役に立ったから、
そこに仕事が生まれた。
そして、その結果として、
お金がついてきた。
もちろん、誰もが本田宗一郎ほど大きな成功をするとは限りません。
ただ、
「自分には何もない」
と思う必要もありません。
あなたが今まで働いてきた時間。
失敗した経験。
身につけた知識。
人から教わったこと。
誰かを助けた経験。
それらはすべて、あなたの中に残っています。
通帳には書かれていません。
証券口座にも表示されません。
それでも確かに存在する、
あなただけの資産です。
だから、お金を増やすことと同じくらい、
自分自身という資産を育てていく。
それを忘れないことが、長い人生でお金に困りにくくなるための、一つの大切な考え方なのではないでしょうか。



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